弓道の基本動作8つ|審査で減点されない所作の身につけ方

弓道の基本動作8つ|審査で減点されない所作の身につけ方

弓道を始めると、射法八節の稽古に意識が向きがちです。しかし、弓道には射法八節以外にも覚えるべき「基本動作」があります。入場から退場までの立ち居振る舞い、礼法、歩き方、座り方。これらの基本動作は審査で必ず評価される項目であり、疎かにすると減点の対象になります。この記事では、弓道の基本動作8つの内容と、審査で減点されないための身につけ方を解説します。

目次

弓道の基本動作は全部で8つ

弓道教本では、基本動作として以下の8つが定められています。

  • 立ち方(たちかた)
  • 座り方(すわりかた)
  • 歩き方(あるきかた)
  • 回り方(まわりかた):停止時と歩行時の2種類
  • 礼(れい):立礼と座礼
  • 揖(ゆう)
  • 執弓の姿勢(とりゆみのしせい)
  • 坐射・立射の体配(たいはい)

これらは射法八節とは別の動作体系です。射法八節が「弓を引く動作」に関する規範であるのに対し、基本動作は「道場内での立ち居振る舞い」に関する規範です。どちらも弓道の稽古に欠かせない要素であり、特に審査では基本動作の出来が合否を分けることがあります。

基本動作1:立ち方 ― すべての所作の土台

弓道の立ち方は、日常生活の立ち姿とは異なります。背筋を伸ばし、顎を引き、両足を軽く揃えて、体重を足裏全体に均等に乗せます。両腕は自然に体側に下ろし、指先は軽く伸ばします。

意識すべきポイント

  • 丹田(へその下約5cm)に軽く意識を置き、下半身を安定させる
  • 肩の力を抜き、首を自然に伸ばす
  • 目線は約4m先の床に落とす
  • 胸を張りすぎない。反り腰にもならない

立ち方は一見簡単に見えますが、審査では入場の瞬間からこの姿勢が見られています。私の指導経験では、立ち方がきれいな射手は、それだけで審査員に良い第一印象を与えます。

基本動作2:座り方 ― 正座と跪座の違い

弓道の座り方には正座(せいざ)跪座(きざ)の2つがあります。いずれも日常の座り方とは異なり、弓道独自の作法があります。

正座の仕方

息を吐きながら左足を半歩引き、左膝を床につけます。次に右膝を床につけ、両膝を揃えて腰を下ろします。膝を床につけるときは音を立てないように静かに行います。両手は膝の上に軽く置き、背筋をまっすぐ伸ばします。

跪座の仕方

跪座は、つま先を立てた状態で座る姿勢です。坐射の体配で射位に座る際に使います。正座と同じ手順で座り、最後につま先を立てます。跪座は体重がつま先にかかるため、慣れないうちは足が痛くなります。日頃から跪座の練習をしておくことを勧めます。

審査でのチェックポイント

  • 膝を床につけるときに「ドスン」と音を立てていないか
  • 上体が前のめりになっていないか
  • 跪座でふらついていないか

基本動作3:歩き方 ― すり足が基本

弓道の歩き方はすり足(すりあし)が基本です。日常の歩行のようにつま先とかかとを上げるのではなく、足裏を床から大きく離さず、滑らせるように進みます。

すり足のポイント

  • 一歩目は左足から踏み出す
  • 呼吸に合わせる:左足を出すときに吸い、右足を出すときに吐く
  • 足裏全体で床をとらえる。つま先だけで歩かない
  • 歩幅は自分の足の長さ程度。大股にならない
  • 上体を揺らさず、丹田を中心にして滑るように進む

すり足は力士の摺り足と同じ原理です。力士が土俵上で安定して動けるのは、足裏を床から離さないことで重心が安定しているからです。弓道のすり足も同じ考え方に基づいています。

基本動作4:回り方 ― 停止時と歩行時の2種類

弓道では方向転換の動作にも作法があります。停止しているときの回り方と、歩行中の回り方の2種類を使い分けます。

停止時の回り方

その場で方向を変える動作です。90度回る場合は、回る方向の足を軽く前に出し、もう一方の足を引きつけて揃えます。体は一度に回さず、足の運びに合わせて自然に方向を変えます。

歩行時の回り方

歩いている最中に方向を変える動作です。曲がる方向の足を踏み出した時点で方向を変え、反対の足をそれに合わせます。歩行のリズムを崩さず、滑らかに曲がることが求められます。

回り方で減点されやすいポイント

  • 回るときに体が傾く
  • 足音が大きくなる
  • 回った後の姿勢が乱れる(上体がぶれる)

基本動作5:礼 ― 立礼と座礼

弓道の礼は立礼(りゅうれい)座礼(ざれい)の2種類があります。

立礼

立った状態で行う礼です。上体を約30度前に倒します。このとき背中を丸めるのではなく、腰から折るように上体を傾けます。目線は自然に下がり、床を見る状態になります。礼をしている間は動きを止め、一拍おいてから上体を起こします。

座礼

正座の状態で行う礼です。両手を膝の前の床につき、上体を前に倒します。手の位置は膝の前方約10cmで、左手・右手の順に床につけます。戻すときは右手・左手の順に膝に戻します。

礼の深さの目安

  • 立礼:上体を約30度傾ける
  • 座礼:上体を約45度傾ける(手は床につく)

基本動作6:揖(ゆう) ― 礼よりも浅い敬意の表現

揖は立礼よりも浅い礼で、上体を約15度前に傾ける動作です。射場への入場時や退場時に行います。

揖と立礼の違いを混同している射手は少なくありません。揖は「会釈」に近い軽い礼、立礼は「お辞儀」に近い丁寧な礼、と覚えておくとわかりやすいです。

揖を行う場面

  • 射場に入場するとき(神棚または国旗に向かって)
  • 射場から退場するとき
  • 審判や前の立ちの射手に対して

基本動作7:執弓の姿勢 ― 弓を持った状態の基本姿勢

執弓の姿勢(とりゆみのしせい)は、弓と矢を持った状態での基本の立ち姿です。弓道の稽古中、射以外の時間はこの姿勢で過ごします。

執弓の姿勢の要点

  • 弓は左手に持ち、弓の末弭(うらはず)を左膝頭の高さに保つ
  • 矢は右手に持ち、矢先を下に向け、弓に沿わせる
  • 両肘は自然に体側に寄せ、力みなく構える
  • 上体は基本の立ち方と同じ。背筋を伸ばし、目線は前方約4mに

執弓の姿勢は一見地味ですが、審査では射以外の時間もずっとこの姿勢で観察されています。弓を持った瞬間から審査は始まっていると心得てください。

基本動作8:坐射と立射の体配

弓道の射は、坐射(ざしゃ)立射(りっしゃ)の2つの形式で行われます。それぞれに固有の体配(入退場から射までの一連の所作)があります。

坐射の体配

坐射は正式な射の形式で、審査では坐射で行うのが基本です。入場→本座で跪座→射位へ移動→跪座→射→退場という流れです。射位への移動は膝行(しっこう)で行います。

立射の体配

立射は立ったまま射を行う形式です。日常の稽古では立射が多く用いられます。入場→射位に立つ→射→退場という流れで、坐射に比べて動作が少なくシンプルです。

審査での注意点

審査では坐射が求められるのが一般的です。坐射の体配は立射よりも複雑で、膝行・跪座・正座の動作が加わるため、事前の練習が欠かせません。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 膝行は音を立てず、滑らかに移動する
  • 跪座から射に移るタイミングを前後の射手と合わせる
  • 矢番え(やつがえ)の動作を正確に行う
  • 弓倒し(ゆだおし)の後、残身を十分に保つ

審査で減点されない基本動作の身につけ方

基本動作を確実に身につけるための稽古法を紹介します。

射の前後に基本動作だけの時間を設ける

多くの射手は的前稽古ばかりに時間を使いますが、稽古の最初の10分を基本動作の練習に充てることを勧めます。入場から射位に着くまでの動作、揖、座り方、立ち方を繰り返すだけで、体が動作を覚えていきます。

本番と同じ流れで通し稽古をする

審査の前は、入場から退場まで一連の流れを通して練習する「通し稽古」が効果的です。射だけの練習では体配が身につきません。本番と同じ緊張感を持って、入場→本座→射位→射→退場の全工程を繰り返します。

他の射手の所作を観察する

上段者の所作を観察することは、基本動作の上達に非常に効果的です。道場で高段者がどのように入退場しているか、揖の角度はどうか、歩き方のリズムはどうかを注意深く見てください。弓道の所作は言葉で説明するよりも、上手い人の動きを見て真似る方が早く身につきます

動画で自分の所作を確認する

スマートフォンで入退場の様子を撮影し、自分の動きを客観的に確認します。私の指導経験では、自分の回り方や歩き方を動画で見て「こんなに不自然だったのか」と驚く射手が大半です。客観視することで改善点が明確になります。

まとめ:基本動作は弓道の品格を表す

弓道の基本動作8つは、射の技術と同じくらい重要な弓道の本質的な要素です。審査では射技だけでなく、入場から退場までの立ち居振る舞いが総合的に評価されます。

基本動作が美しい射手は、たとえ的中が完璧でなくても「弓道をよく理解している」という印象を与えます。逆に、的中率が高くても基本動作がおろそかだと「射は上手いが弓道の品格がない」と見られてしまいます。日々の稽古で射法八節とともに基本動作も磨き、射技と所作の両方が備わった弓道を目指してください。

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