弓道の射法八節の中にある「胴造り」。この胴造りには実は五つの胴づくりが存在します。弓道を始めたばかりではあまり聞いたことがないかもしれませんが、弓道を上達させるためにはぜひ知っておきたい事柄です。また、段級試験の筆記試験対策としても知っておいて損はないことです。そこで今回は弓道が上達するための練習方法のためにもぜひ知っておきたい五つの胴づくりについて解説します。
五胴とは|5種類の胴造りの名称
五つの胴づくりと漠然と書いていますが、それぞれの胴づくりには名称があります。まずはその五つの胴づくりの名称を列記します。
- 反る胴(そるどう)…上半身が後方へ反るもの
- 屈む胴(かがむどう)…上半身が前にかがむもの
- 懸る胴(かかるどう)…体が的の方に傾くもの
- 退く胴(のくどう)…体が右に傾くもの
- 中胴(ちゅうどう)…中立かつ正しい胴づくりで体の重心の最も安定したもの
次の項でそれぞれの胴づくりについて詳しく解説していきます。
五胴それぞれの意味と原因
名称がわかったところで、次にそれぞれの胴づくりが意味することを解説していきます。28年の稽古と指導経験をもとに、原因となる動作パターンも合わせてお伝えします。
反る胴(そるどう)
反る胴には次のような原因が考えられます。
- 背筋を伸ばす意識が強すぎる
- 胸を張りすぎる
また極端な反る胴は弓が90度以上に傾き、上半身の力頼みの射形になってしまいます。私の指導経験では、「背中を伸ばそう」と意識するあまり反る胴になってしまう初心者が非常に多いです。正しい伸びは縦方向への伸び、つまり頭頂から天に引かれるような感覚であって、胸を反らすことではありません。
屈む胴(かがむどう)
屈む胴には次のような原因が考えられます。
- 腰を後ろに引きすぎている
- 体から遠い位置を経過しながら打起してている
- つま先に重心がかかりすぎている
極端な屈む胴では重心が自分の体の前方にきてしまい、つま先立ちのような不安定な射形になってしまいます。弓を高く上げることに意識を向けすぎたとき、体が前傾してしまうケースが多く見られます。
懸る胴(かかるどう)
懸る胴には次のような原因が考えられます。
- 中てたい!という気持ちが強すぎる
- 左手を的の方向へしっかり伸ばさねばという気持ちが強すぎる
- 左足に力が入りすぎている
- 右手に向ける意識が欠けている
極端な懸る胴では、右手が遊んでしまいきちんとした矢飛びにならない可能性が出てきます。また、左右で妙なバランスを離れで取るようになるため、中たる時はいいのですが、バランス・タイミングを外せば急に中たらなくなってしまうでしょう。
退く胴(のくどう)
退く胴には次のような原因が考えられます。
- 右手の修正に意識を向けすぎている
- 左手の力が極端に弱い
- 大三で右肘を張りすぎている
この退く胴では下手をすると左手が浮いてしまって弦で負傷してしまうことがあるでしょう。また、離れが下方向に出てしまい矢が弧を描くように飛んでいくでしょう。極端な退く胴は左手のみならず、右手のバランスも崩れます。
胴造りの真価「中の胴造り」
五つの胴のうち、中胴…中の胴造りについて先ほど触れましたが、最後に中の胴造りについて解説します。
本来目指す完成形では、「反る」「屈む」「懸る」「退く」ことない真っ直ぐな胴となります。
中の胴造りを作る3つの感覚
真っ直ぐな胴をつくるには、足に無駄な力も必要なく、腰や胸、背中を無理に張るように力を入れる必要もありません。足踏みで土踏まずの上に重心を落としておけば、まず足に無駄な力が入りません。さらに姿勢を正すのは、頭のてっぺんから糸で引っ張られるようなイメージを持って上に向かうように体を伸ばします。
- 頭のてっぺんから糸で引っ張られるようなイメージを持つ
- 全身を曲げないように前方へ少し傾ける
- 背中の筋肉が少々引っ張られるような感覚をつかむ
このようにすると、より的確に胴造りが上達します。この胴造りをマスターすると、足関節から下半身、上半身と頭部にかけての重心線が一直線になり、左右と縦横の均一なパワーバランスが取れます。
五胴と中の胴造りの使い分け
弓道の段位が上がると、五胴の知識は単なる理論にとどまらず、自分の射形の分析と修正に直接役立ちます。「今日は離れのタイミングが遅れた」「矢が左に飛びすぎた」と感じたとき、五胴の概念で自分の胴造りを振り返ることができます。
私が後輩や生徒を指導するときにも、「その離れは退く胴になっているよ」と一言伝えるだけで、当人が原因を理解して修正できるケースが多くあります。五胴を知ることは、弓道の言語を習得することでもあります。
五胴の自己チェック方法
稽古後に自分の胴造りをチェックするには、次の方法が効果的です。
- 鏡を使った確認:正面・側面から自分の立ち姿を確認します。三重十文字が揃っているか、前後左右に傾いていないかを見ます。
- 壁を使った確認:壁に背をつけて立ち、かかと・尻・肩甲骨・後頭部が均等に触れているかを確認します。
- 仲間との相互確認:正面・側面から見てもらい、胴造りの傾きを指摘してもらう方法が最も確実です。
審査対策としての五胴知識
段級審査の筆記試験では、五胴について問われることがあります。単に名称を覚えるだけでなく、それぞれの特徴・原因・射形への影響を説明できるようにしておきましょう。自分の体験談はその人自身の実力なりを表すものであり、借りものは長年経験のある試験委員にはわかってしまうといいます。
五胴について解説しました。最後の項にあげたポイントを踏まえた「中胴」をマスターするように練習を心がけて、弓道を上達させていってください。

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