弓道を始めて最初の壁の一つが胴造りです。「ただ立っているだけでしょう」と思う方もいるかもしれませんが、28年の稽古経験を持つ私に言わせれば、胴造りは射の根幹であり、的中率を根本から左右する最重要の動作です。射法八節のすべての動作は胴造りという土台の上に成り立っています。この記事では、胴造りの重要性と正しいやり方、そして胴造りが崩れたときに起きる悪い射形について詳しく解説します。
胴造りとは何か|射の「土台」を理解する
胴造りとは、足踏みを終えた後、次の弓構えまでのつなぎの動作というイメージを持っていませんか。実はそれは大きな誤解です。胴造りは射全体を通じて維持されるべき「上半身の基盤」そのものです。
一言で言えば、胴造りとは「三重十文字」と「中の胴造り」を実現することです。この2つのポイントを理解することが、弓道上達の大きな鍵となります。
三重十文字とは何か
三重十文字の「三重」とは、足踏みを終えたときの両足の土踏まずを結ぶ線、腰を水平にとらえた線、両肩を結ぶ線の3本の横線を指します。そして三重十文字の「十文字」とは、頭から床に向けて垂直に下した線が先に述べた三重の線と交わると、それぞれが「十」の文字の形になることを意味します。
この2つをまとめて「三重十文字」といいます。
- 土踏まずを結ぶ線が崩れていれば、体が的の前後に向きます。
- 腰がねじれていたり、両肩が水平でなければ、弓に適切な力が伝わらず矢の速度・貫徹力は損なわれてしまいます。
中の胴造りとは何か
中の胴造りとは、「反る・屈む・懸る(かかる)・退く(のく)」という偏りがない垂直で前後左右均等な胴造りのことです。反る・屈むはわかりやすいとして、懸る・退くとはどういった状態なのか説明します。
- 懸る:的の方向に向けて体が傾いている状態です。
- 退く:的とは逆の方向に向けて体が傾いている状態です。
「反る・屈む・懸る(かかる)・退く(のく)」といったことのない中立かつ正しい「中の胴造り」を行うことが重要です。この2つのポイントを得ることによって、安定した上半身の基盤を得ることができます。
胴造りが崩れると現れる5つの悪い射形
胴造りの重要性がわかったところで、今度はそのポイントを外すと起こる悪い射形について解説です。私が長年指導していて、最もよく見られる失敗パターンを5つ挙げます。
その1|出尻(でじり)
上半身が前方に傾き、お尻が突き出した形になります。この状態では胸側に不自然な力が入り、呼吸がつまり伸びがうまくできません。さらに重心が前になりますので、足先に無駄な力が入り弓が前に倒れます。縦線のバランスが崩れるので、矢飛びが悪くなります。
その2|鳩胸(はとむね)
鳩胸の状態ではお腹やひざが前に出ます。すると重心が後になり上半身が不安定になります。弓は後ろに倒れ安定して矢を射ることができません。毎度バラバラな射形となってしまいます。
その3|的の方へ体が傾く(懸る)
的の方向へ向けて体が傾くと、左足で無理に踏ん張ります。重心は左側になり右手・右足は浮き、離れでバランスを取ります。離れが無理矢理切るような、力がこもるような射形になりタイミングがバラバラになれば、失速・暴発などにつながります。
その4|的とは逆方向へ体が傾く(退く)
的とは逆の方向へ体が傾くと、今度は右足で無理に踏ん張ります。重心は右側になり左手・左足は浮き、このような場合にも離れでバランスを取ります。離れの際、左手を離れの時会の位置より上にあげます。
その5|腰のねじれ
腰がねじれていれば、狙いが正しくつけられません。なぜなら、根本的に的の後ろや前に体を向いていれば引き分けての狙いもズレてしまうからです。狙いとしてはいいのに中たらない、そういった状況を招いてしまいます。
弓道が上達する胴造りの練習方法3つ
では最後に弓道が上達する胴造りの練習方法をご紹介します。長年の指導経験から効果的だと確信しているものだけを厳選しました。
練習法1|足踏みから見直す
胴造りなのに足踏み?と疑問に思われたかもしれません。2つの動作はどうしても切り離すことができないため、胴造りの前に足踏みを再確認するとよいのでしょう。下半身の基盤は足踏み、上半身の基盤は胴造りです。
足踏みが正しくできていなければ、胴造りも正しく行えません。まず足幅・つま先の向き・体の向きを毎回確認する習慣をつけてください。
練習法2|重心の位置を意識する
足のどこか部分的に力をかけてしまうと重心がうまく取れません。適切な重心の位置は、左右足の親指、かかとを結ぶとできるX字の交点になります。練習中にこれを確認するには以下の方法を取ります。
- 足踏み後、両足の指を反らす
- 7秒ほど両足の指を反らした状態をキープ
- 反らしていた指を降ろす
これで両足の各点を結んだ交点、適切な重心の位置がわかります。
練習法3|頭から糸で引っ張られるイメージを持つ
中の胴造りを体感するには、「頭のてっぺんから糸で引っ張られるようなイメージを持って上に向かうように体を伸ばす」という意識が効果的です。上に向かうように体を伸ばす際、全身を曲げないように前方へ少し傾けて背中の筋肉が少々引っ張られるような感覚をつかむとより的確に胴造りが上達します。
この胴造りをマスターすると、足関節から下半身、上半身と頭部にかけての重心線が一直線になり、左右と縦横の均一なパワーバランスが取れます。
胴造りは「意識する」から「染み込む」へ
以上のポイントなどを踏まえて胴造りを意識することで弓道は上達していきます。最初は意識しなければできなかった胴造りも、繰り返し練習することで自然と体に染み込んでいきます。
私の経験では、胴造りが正しく身についた瞬間から的中率が安定し始めます。毎回の稽古で必ず確認する項目に胴造りを加え、三重十文字と中の胴造りを意識した練習を続けてみてください。その積み重ねが、弓道の確かな上達につながります。

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