弓道には段級審査があります。審査は個人の実力を計る基準であり、日々練習している成果を出す場でもあります。大切なのは、自分が今何段であると段にこだわることではなく、自分の実力がどのくらいに達しているかを知り、精進することです。今回は弓道の昇段審査とはどういうものか、初段から五段の合格基準と審査対策について詳しく解説します。
弓道の段級制度|全日本弓道連盟の仕組みを理解する
弓道において段級審査を認許するのは全日本弓道連盟のみとなっており、その段級は、級が5階級、段が10級の計15階級にわかれています。段級審査を受けるためには、連盟の会員でなければなりません。連盟の会員、というと手続きが面倒そうな印象を受けるかもしれませんが、自分の住んでいる地域の地域連盟に入会すれば、自動的に連盟の会員になります。
公営の弓道場や有名な道場では、まず連盟に加入していますので、そこで入会の手続きを聞くといいでしょう。なお、受験の申し込みは、四段までなら地域連盟で受け付けていますが、締切期限は厳重に守られているので出しそびれのないように気をつけましょう。
段位ごとの合格基準|初段から五段まで
28年の稽古経験で、数多くの審査を経験してきました。各段位に求められる内容を、実体験をもとに解説します。
初段・二段の基準
初段・二段は「射法八節が概ね身についている」ことが求められます。的中については二矢的中(4本中2本)が一つの目安ですが、的中だけでなく動作の流れ・礼儀・弓具の扱いも審査されます。初心者にとっての最初の壁であり、「弓道らしい動作」ができているかどうかが問われます。
三段・四段の基準
三段から四段にかけては、射法八節の各動作が「正しく」できているかどうかがより厳しく見られます。三矢以上の的中が求められることが多く、会の充実・離れの冴え・残心の安定などが評価の対象となります。学科試験もあり、射法や射術・射礼・精神的な問題まで様々あります。三段以上は体験を中心として書きましょう。
五段の基準
五段は「錬士」の称号申請が可能になる節目の段位です。射技の完成度はもちろん、弓道に関する広い知識と精神性が求められます。審査員は日頃の実力を見ようと、しっかり挙動を見てきます。このため、普段と勝手が違って感じられ失敗しがちです。当日焦らないためにも、日頃の稽古の質と量が問われる段位です。
昇段審査を受けるにあたっての心構え
段級審査を受けるにあたり、目標を決めることはとても大事です。既に段級を持っている人は順当に一つ上の段級を受けることになりますが、初めて受ける場合は先輩や先生に相談するといいでしょう。また、最初に試験を受けるときに、目標の段位を記入しないで、審査員の査定によって段が決まるという受験方法もあります。普通はこの審査が審査日の最初に行われます。
受審前の練習については、これといって特別なことが必要になるわけではありませんが、審査員は日頃の実力を見ようと、しっかり挙動を見てきます。このため、普段と勝手が違って感じられ失敗しがちです。試合前日は軽い練習で済ませ、気を楽にして通常通りのリズムを守りましょう。初段以上を受験する人は学科試験があるので、問題に目を通したり先輩に話を聞くのもいいと思います。
また、前日の内に、予備の弦(かえ弦)や弓、かけを点検しておくと、受験日当日余裕を持って弓の張り替えに臨めます。
受審当日の動き方|段取りが落ち着きを生む
受審当日は早め、できれば開始1時間前くらいに試験場に行き、控え場所や自分の弓の置き場所などを決めておくといいでしょう。弓を引く直前に道具を間違えたりすることもあるので、不安な人は目印などを付けてもいいかもしれません。受審開始前に主催者側からある注意点などはしっかり聞き、不明点は質問しておきましょう。
また、自分が属する組の順番や時間などは確かめておき、時間に余裕がある場合は心身を休め調えるよう心がけましょう。この、自分が属する組のこと、あるいは射るところまで含めて「立ち」といいます。弓はできるだけ早めに張りましょう。張りたての弦は弓の調子が出ず、日頃の実力が発揮できなくなってしまいます。またギリ粉、筆粉は射位はもちろん、控えの本座に出てからは使用しないようにし、立つまでに着けておきましょう。
時間が来て指名を受けたら、同じ「立ち」の人達の仲に入り、挨拶をして交わしておきましょう。自分が行射するときは、熟練者でも気持ちが上がりがちです。中てたいと思っても中るわけでもないので、うまく引こう、中てようとは思わず、欲を出さないことが肝要です。引き終わったらそのまま前に進み、一番後ろの場合は、一歩下がって本座の後ろを通り、所定の出口から出ます。
学科試験の対策|自分の体験を軸に書く
初段以上は学科試験があり、その時の都合により学科と術科が前後することがあります。学科試験の問題は、弓道の道具に関する常識程度のものから射法、射術、射礼、精神的な問題まで様々ありますが、共通していえるのは自分の体験や見聞をもとにして書きましょう。
自分の体験談はその人自身の実力なりを表すものであり、借りものは長年経験のある試験委員にはわかってしまうといいます。答案については、弓道に限った話ではありませんが、次の点に注意するといいと思います。
- 問題の趣旨を理解し、見やすい字で、簡潔に明確に書きましょう。
- また問題の内容にもよりますが、三段以上は体験を中心として書きましょう。
段位よりも大切なこと|精進し続ける姿勢
弓道に限った話ではありませんが、段級試験を受ける意味としては、自身の練習の成果を確認したり、自分の実力のレベルを確認したりと様々だと思います。しかし、一番大切なことは、段位にとらわれすぎず、目標に向かって努力することだと思います。もちろん、段位に合格することは楽しいことで大切なことですが、それに満足してしまってはいけません。通過点であることを意識し、精進に努めましょう。
ただし、段級の数にとらわれるのはよくないことですが、段級審査を受けること自体は、自身の鍛錬や勉強の点からも有意義だと思います。段位は目的ではなく手段です。審査の場で日頃の稽古の成果を発揮し、次の目標に向けて歩み続けることこそが、弓道の本質です。
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