手の内は弓道が弓術であった時代から、ずっと射の良し悪しを決める重要な動作です。指導者によって多少のニュアンスの違いはあれど、手の内の基本的な整え方は同じです。ただ流派によってはがらりと手の内が変わることもあります。今回は弓道の手の内の作り方として、正面、斜面の両方のやり方を解説していきます。さらに双方の手の内の特徴も含めて解説します。それぞれの手の内の作り方や特徴をおさえて、弓道をより上達させていきましょう。
手の内とは何か|射の良し悪しを決める左手の技術
手の内とは左手(弓手)の弓の持ち方・整え方のことです。28年の稽古の中で、手の内ほど「わかっているのにできない」技術はないと感じてきました。説明できても体で表現するのが難しい、それが手の内です。
手の内は大三で完成させるものですので弓構え時に完成はしません。弓構えでの手の内はあくまで整える程度であることを前提に、作り方を解説します。
正面の手の内の作り方|5つのステップ
では正面の手の内の作り方について解説します。
- (1)虎口を軽く握りに当てて、天文筋(=手のひらで小指の下側にある、太くしっかりした筋)を自分自身から遠い握りの角に当てます
- (2)虎口(=親指と人さし指との指股)を巻き込み、握りをねじり伏せるような気持ちで親指を当てます
- (3)小指、薬指、中指の3本の指を揃えて握りに添えます
これで手の内は作れます。やり方としてはシンプルですぐにできそうなものですが、シンプルだからこそ押さえておきたいポイントがあります。
正面の手の内|3つのポイント
1つ目のポイントとしては、虎口を軽く握りに当てた際左手は軽くすぼめるようにしておくことです。すぼめるようにしておけば、自分自身から遠い握りの角に天文筋を当てると必然的に手の内が小さくなります。基本的に手の内は小さく作るため、最初から小さくする準備をしておきます。
2つ目のポイントとしては、虎口を巻き込む際親指の左側面を握りにこすりつけるようにすることです。この親指の左側面が握りに触れていないと、角見の働きが悪くなり、矢の制御、貫徹力に影響します。
最後のポイントとしては、3本の指を揃えて添える際天文筋を浮かさないことです。特に自分自身の手と握りの大きさが合っていないと起こることなのですが、手の内を小さくしようとしすぎて天文筋が浮いてしまうことがあります。こういった状態で弓を引いていると、小指の付け根あたりにマメができます。これは天文筋が浮いた分小指に力を入れてカバーしようとしているためです。自分自身の手のひらをチェックしてみましょう。
斜面の手の内の作り方|5つのステップ
斜面の前提は弓構えで完成させて、それ以降の動作で変化・変更をしません。この前提をもとに、斜面の作り方について解説します。
- (1)虎口を巻き込み、握りをねじり伏せるような気持ちで親指を当てます
- (2)小指を親指にできるだけ近づけて握りに当てます
- (3)親指と小指の間にできた隙間に、薬指、中指を差し込みます
これで手の内が作れます。斜面の手の内を「紅葉重ねの手の内」といったりします。この斜面の手の内にもやはり押さえておきたいポイントがあります。
斜面の手の内|3つのポイント
1つ目のポイントとしては、弓を押し広げすぎないことです。斜面での手の内は、斜面の名が示すように少し斜め前に弓を押し開いた状態で整えます。弓を押し広げすぎてしまうと、今度は右手に悪影響を与えてしまうので、弓をあまり押し広げすぎないようにします。
2つ目のポイントとしては、小指を親指に近づける際天文筋を浮かせないことです。これは先に述べた正面の手の内のポイントと似ています。正面と違うのは、先に小指だけを親指に寄せることです。できるだけ親指との距離をなくそうと小指を寄せるのを頑張りすぎると、天文筋が浮いてしまいます。寄せることに加えて、天文筋を浮かさないようにしましょう。
3つ目のポイントとしては、薬指と中指を差し込む際薬指と中指に力を入れないことです。正面の手の内と異なり、斜面の手の内では3本の指は必ずしもそろえて握りに置く必要がありません。そのため、親指と小指の間に差し込んだ2本の指には力を入れないよう気をつけましょう。もしどちらかに力が入ってしまうと、小指が遊んで天文筋が浮いてしまいます。もし小指以外の指に力が入っている場合、薬指もしくは中指にマメができています。自分自身の手のひらをチェックしてみましょう。
正面・斜面の手の内|それぞれの特徴と違い
最後に正面・斜面の手の内におけるそれぞれの特徴を解説します。
正面の手の内はバランス重視型
もともと正面の射形が全体のバランス重視である礼射系です。そのため正面の手の内も「バランス重視型」となります。それが3本の指を揃えて配置するという点にも現れています。この指を揃えておくと、前方から射形を見た時にきれいに見えます。さらには手の内全体のパワーバランスもとりやすいようになっています。
斜面の手の内は左手強化型
斜面の射形はもともと武術の毛色が濃い武射系です。そのため斜面の手の内は「的中重視の左手強化型」となります。極端な話、的中だけを考えるなら左手を強化・安定させると的中させることができるからです。左手強化型であるというのが、親指で少し弓を押し開きながら手の内を作る点と、親指と小指をできるだけ寄せる点に現れています。弓構えで完成された手の内は、あとはどんどん左手が伸びる、押し込む力を加えることで矢の勢いや貫徹力が上がります。パワー重視ではあるので、左腕全体のパワーに自信がなかったり、左手の筋力が弱いと少々つらい手の内ではあります。
手の内を上達させるための練習方法
手の内は頭で理解するだけでは身につきません。私が後輩の指導で効果的だと感じた練習法をお伝えします。
- ゴム弓での反復練習:ゴム弓を使って手の内の感覚を繰り返し確認します。実弓の張力がない分、細かい形の確認に集中できます。
- 鏡でのチェック:正面・側面から手の内の形を確認します。天文筋が当たっているか、角見が効いているかを目視できます。
- 仲間との相互確認:引き分けから会にかけての手の内の形を仲間に見てもらいます。自分では気づきにくい崩れを指摘してもらえます。
- マメの場所の確認:マメができる場所が、手の内の崩れを教えてくれます。正しい手の内ができていれば、マメは特定の場所に一定のものができます。
以上手の内の作り方と、正面・斜面の手の内の特徴についての解説しました。自分自身の手の内に合わせたやり方、ポイントをおさえてより弓道を上達させていきましょう。

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