弓道の五重十文字について
弓道の全工程で、常に中心となる基本体型があります。それらは十文字とよばれ、胴造りでの三重十文字、会で完成する五重十文字があります。
弓道の見かけ上の美しさのみならず、技術上達のために、是非とも意識して練習していきたい部分です。
1.縦横十文字の線
まず、五重十文字の説明の前に、弓道の最も基本的で、五重十文字に至る大前提についてお話しします。
五重十文字を形成するには、縦横十文字の線を身につけなければなりません。
人体は、いろいろな部分からなっています。両足、両膝、腰、背中、首、両肩、両腕、両手指…など、実にいろいろな部分からできています。
これらを活動させるのは、筋肉と関節です。弓道は、筋肉と関節を実に効率的に、かつ合理的に扱うスポーツです。
そのため、余分な力を抜き、正しい場所へ筋肉や関節を移動させなければなりません。縦横十文字線はその中心となる十文字であり、ひいては弓道の行射を常に助けてくれます。
その十文字とは、足、腰、頸椎を軸とする縦と、両肩、両腕、両肘の横の線…この線の組合せが、基本体型である縦横十文字線です。
縦横十文字も美しい姿勢につながるものです。美しい姿勢は、余分な力の抜けた自然体で、この自然体が人間の正しい骨格を表しているのです。
2.五重十文字
縦横十文字の基本的な姿勢が完成されたなら、さらに射の運行に伴って五重十文字が構成されます。
五重十文字とは、「弓と矢」「弓と押手の手の内」「弽の親指と弦」「胸の中筋と両肩を結ぶ線」「首筋と矢」の五ヶ所をいいます。
これらの五ヶ所の十文字線が、会において、ほぼ直角に十字をなしていると、射形が安定し、体のバランスも取れます。そのため、五重十文字がしっかりできていれば、安定した美しい射に、ひいては弓道の上達につながります。
しかし、無理にこれらの五重十文字をつくろうと意識しすぎて躍起になると、無駄な力が入ってしまい、自然体から遠のいてしまいます。
まず押えておきたい部分は足踏みです。足踏みは弓道全体の骨格を作るものですから、ここは正しく行いたいところです。
顔向けをしても体がぶれていませんか。上半身と下半身がずれていませんか。
足踏みで固めた下半身と上半身が同じ方向を向いているか確認して下さい。
また、無理なく正しい五重十文字を形成し、射の最中ずっと維持し続けるためには、息合いや目づかいといった内面的な活動も決して軽視できず、重要となってきます。
また、五重十文字の上達の基本は丹田であることを心がけましょう。
弓道の射法八節は、基本体型を作り上げる方法を説明しています。中でも特に、無駄な力を抜くことと、正しい骨格に基づいた自然体で射を行うことの2点を守れば、おのずと五重十文字に近付いていくことでしょう。
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